――「最後まであきらめなかった選手に感謝。守備の意思統一が生んだタイトル」
2025シーズン北信越フットサルリーグ二部は、最後の最後まで優勝の行方がもつれる大混戦となった。長岡ロッカは前週の時点で全日程を終え、勝点・得失点の面で首位に立ちながらも、優勝確定は最終節の他会場――プロミネンス新潟アットホームラボ vs ミラクル諸江の結果を待つ形となった。
コートの上で戦い終えたあとも続く緊張感。王者が決まる瞬間を自分たちの試合で迎えられない、もどかしさと祈るような時間。それでもロッカが手にしたのは、リーグ最少失点という堅牢な守備を軸に、シーズンを通して積み上げてきた“揺るがない勝点”だった。最終戦の結果を経て優勝が確定した瞬間、チームの努力が静かに報われ、悲願のタイトルと来季一部昇格への切符をつかみ取った。
優勝決定が決まって西山展生監督は、まず支えてくれた人々への感謝を口にしながらも、苦しかったシーズンを乗り越えた確かな手応えと、次の舞台へ向かう覚悟を語った。ここでは、二部制覇までの歩みとチームの現在地、そして来季への展望について、指揮官の言葉から振り返る。
■優勝した今の率直な気持ち
「多くの方々からのサポートのおかげで優勝することができました。応援していただいた皆さまありがとうございました。リーグ戦がこれほどに長く感じたことは初めてで、苦しい時期もありましたが最後まであきらめなかった選手にも感謝したいです。」
監督は「周囲の支えがあってこそ」と言葉を置いた。選手たちの努力はもちろんだが、日常の練習環境、遠征、チーム運営――そのすべてを支え続けてきた関係者の存在が、何より大きかったという。
「長く感じた」という表現は、それだけ一試合一試合が重く、気の抜けない戦いだったことの裏返しだろう。苦しい時期を知るからこそ、最後に手にした優勝の価値は一層大きい。監督の表情に浮かぶ安堵と喜びは、シーズンを通して積み上げてきた確かな歩みの証だった。
■今シーズンのターニングポイント
「後期リーグ第1節のプロミネンス新潟アットホームラボさんとの試合です。試合終了残り時間わずかなところでの同点ゴールで、引き分けに持ち込めたのが振り返ればターニングポイントだったと思います。」
後期開幕戦、その試合は勝点以上の意味を持っていた。終盤に追いつき、勝ち切れなかった――結果だけ見れば「引き分け」。しかし、シーズン終盤に向けてチームの精神的な軸を作ったのは、この“負けかけた試合を拾えた”経験だった。
勝負どころで踏みとどまり、最後の最後まで諦めない。監督が一年を通して大切にしてきた姿勢が、試合の中で形になった瞬間でもある。その一戦を境に、長岡ロッカは「簡単に崩れないチーム」としての輪郭をさらに濃くしていった。
■チームとして最も強みだと感じた部分
「リーグ最小失点という数字が示すように、結果的には守備がチームの強みであったと思います。攻撃は選手個人の能力に頼る部分が大きかったですが、守備はチームとして意思統一ができていたと思います。」
今季の長岡ロッカを語るうえで、最も象徴的なのが「最小失点」という結果だ。守備は個々の能力だけで成り立つものではない。ボール保持者への寄せ、カバーの連動、切り替えの速度、チャレンジとリスク管理。全員が同じ絵を見て初めて成立する。
監督はその基盤が「意思統一」のレベルで完成していたと語る。守備におけるチームの共通理解が高かったからこそ、得点が伸び悩む試合でも、勝点を取りこぼさずに積み上げられた。そしてその粘り強さが、長いリーグを制するうえで何よりの武器になった。
■今季のキーマン
「ゴレイロのNo.17吉田選手とNo.20松本選手です。吉田選手は全試合に出場し、決定的な場面でのセーブでチームを何度も救ってくれました。松本選手は独力でシュートまで持っていける能力があり、彼のドリブルは相手にとって脅威だと思います。」
今季の土台となった守備を最後に締める存在――それが全試合に出場した守護神・吉田選手だった。決定機を防ぎ続け、失点の気配を断つ。ゴレイロの安定は、フィールドプレーヤーにとって大きな安心となり、チーム全体の守備強度を上げる連鎖を生んだ。
そして、もう一人のキーマンに挙げられたのは松本選手。堅守をベースに勝点を積み上げるチームにとって、最後の局面で「違いを作れる個」が必要だ。相手の守備を一枚、二枚と剥がしてシュートまで持ち込む推進力は、試合の流れを変えるスイッチになった。
「守って、耐えて、決め切る」。長岡ロッカの勝ち筋を体現した二人だったといえる。
■この一年で特に成長したと感じるポイント

新加入選手も多かったため、シーズン序盤は戦い方に迷いがありましたが、試合を重ねるごとに自分たちのやり方が定まっていったと感じます。終盤は自信を持って試合に臨めました。
今季の長岡ロッカは、決して順風満帆ではなかった。新加入選手が多く、チームのベース作りからのスタート。序盤は「どこに軸を置き、どんな戦い方を積み上げるか」が定まりきらず、試行錯誤の時間が続いたという。
しかしリーグを重ねる中で、チームは自分たちの勝ち方を掴んでいく。守備を軸に試合をコントロールし、勝負どころで攻撃の個が顔を出す。戦い方が統一されることで、選手の迷いは減り、終盤には「自分たちならやれる」という確信がチーム全体に広がっていった。
その“自信を持って臨めた終盤”こそが、優勝への最後の一押しだった。
■今季チームを支えてくれた方へのメッセージ
「全ての関係者の皆さまのおかげでシーズンを全うすることができ、本当に感謝しています。優勝は結果であって、チームとして活動し続けることが大切で大変だと思います。それでも支えてくださった方々に優勝という形で報いることができたのは素直に嬉しいです。」
監督の言葉には、日々の活動の重みがにじむ。勝ち負けだけではない、チームを「続ける」ことの難しさ。練習環境づくり、遠征・運営、そして地域に根ざすクラブとしての役割。その積み重ねが、長いシーズンを戦い抜く力になる。
だからこそ、優勝を「結果」と捉えつつも、それをサポートしてきた関係者へ“形として返せたこと”が嬉しいと語る。長岡ロッカが、競技だけでなくクラブとして成熟していく歩みを感じさせる言葉だった。
■来シーズンに向けた目標・意気込み
来シーズンは1部で戦う予定ですが、現状1部のレベルに遠く及ばないので開幕までにできる限り積み上げていきたいです。
喜びの先にあるのは、すぐに訪れる新たな挑戦だ。来季は一部という最高峰の舞台での戦いが待っている。監督は今のチーム力がそのレベルに達していないことを冷静に見つめ、だからこそ「開幕までに積み上げる」ことを掲げた。
二部を制した堅守は、一部でも通用する土台になりうる。ただ、一部ではより高い個の質と、スピードの中での判断、そして決定力が求められる。監督が口にする「積み上げ」とは、単なる強化ではない。すでに築き上げた自分たちのスタイルを、一部の強度の中でどう磨き、どう進化させていくか――その挑戦である。
■まとめ
長岡ロッカの二部優勝は、派手さよりも“積み重ね”で掴み取った栄冠だった。苦しい時期を乗り越え、守備の意思統一を武器に最後まで走り切る。その姿勢が、接戦を拾い、勝点を積み上げ、優勝という結果につながった。
西山展生監督が語った「優勝は結果」という言葉の真意は、ここからさらに深まっていくだろう。新たな舞台である一部リーグで、長岡ロッカはどんな進化を見せるのか。今季の経験は、来季の挑戦へと確かに繋がっている。
二部王者として挑む一部のシーズン。その歩みに、北信越のフットサルファンの注目が集まる。

